バイオ試薬メーカーが作るチラシの数

先週の金曜日、私のTwitterタイムラインに以下のTweetが入ってきました。

Nk tweet s

もっともな意見です。私がメーカーに勤務していた頃も、代理店に送っているチラシやパンフレットの多くが余ってしまい、代理店事務所で山積みにされ、そして捨てられているのは知っていました。

メーカーも予算は厳しいので、必要以上に多くのチラシを作りたくはありません。一つのチラシを作って配布するだけで数十万円はかかりますから(デザイン抜きで)。それでも過剰に印刷して代理店に送付しているにはちゃんと訳があります。

どれぐらいのチラシが作られているか

メーカーがどれぐらいの数のチラシを作っているかというと、メーカーにもよりますがだいたい25,000から30,000部ではないかと思います。1枚ペラの場合はだいたいこれぐらいの部数で、複数毎のブローシャーになるとさすがにお金がかかりすぎるので部数を減らします。ただ毎年配布している全製品のカタログは広く行き渡らせたいので、やはり3万部近くを作成しています。

これだけの部数を作るのにどれぐらいお金がかかるかと言いますと、チラシは印刷から配送まで数十万円ですが、カタログの場合は数千万円規模でお金がかかってきます。数ヶ月に一回配布する冊子(例えばクロンテクニークバイオケミカニュースLife Technologies NEXTなど)は数百万円かかります。これはメーカーのマーケティング部の予算のうち、相当に大きな部分です。

経費を切り詰めるために、印刷部数を減らせないかとか、いっそうのこと止めてしまえないかという議論はどこのメーカーでも行われていると思います。それぐらいに大きな負担です。

どうして部数を減らすことはできないのか

詳細は忘れてしまいましたが、以前勤務していたメーカーでは、代理店に直接質問して、「一体どれだけの部数が本当は必要ですか?」と聞いたことがあります。でも帰ってきた答えをまとめると結局は「今までと同じぐらい」となってしまって、部数を削減することはほとんどできませんでした。我々の営業担当者が代理店に山積みされている印刷物を目の当たりにしていて、余っていることははっきりと把握しているにもかかわらずです。

どうしてそうなるのか、ちょっと考えてみれば簡単に分かります。

メーカーから見た場合、代理店の存在意義は 1) お客様の支払いを代行してくれること、そして 2) お客様に製品をプロモーションしてくれることに尽きます。特に2)は大切です。自社製品を買ってくれるようにお客様に働きかけることをメーカーは非常に期待しています。逆に自社製品を使ってくれているお客様に、他社の製品を勧めてしまわないかと恐れています。

そうなると代理店の「力」の指標は、究極的には売上げではありますが、もう一つには「お客様の数」になります。どれだけ多くの研究室に出入りしていて、どれだけ多くの研究者と馴染みになっていて、どれだけ多くの研究者にメーカーの製品をプロモーションできるかが代理店の「力」になります。

代理店がどれだけ製品をプロモーションをしてくれたかはメーカーには直接見えませんが、一つの目安はチラシを何部配布してくれたか、カタログを何部配布してくれたかです。たくさんのチラシを配布してくれる代理店は、たくさんのお客様を抱えていて、自社製品を積極的にプロモーションしてくれていると考えられるので、メーカーとしては大切にしたい代理店になります。

そうなると当然、代理店としては多くのチラシを配布しているように見せかけたくなります。実際にはあまり配れずにたくさん余らせてしまっていても、それは伏せておいて、メーカーにはたくさん配っているように思わせたいはずです。ですから多くの部数を要求し続けたいという心理が働きます。力がある代理店であれば、こんなことをやらなくてもメーカーに対して強い立場は保てますが、そうでもない代理店の場合は、自分の存在を大きく見せたくなるのは自然なことです。

メーカーにしてみれば、代理店が欲しいと言っている以上、要望された部数を印刷するしかありません。メーカーの立場が強ければ、もしかしたら「これだけ販促物を与えるから、ちゃんと売ってきてくれよ」ということが言えるかもしれません。しかしそういう力関係でなければ、敢えて代理店の意に反することは仕掛けないでしょう。

大雑把に言えば、印刷物の部数を減らせないのはこんな理由だと思います。

最後に

代理店からすると「メーカーは何でこんなことをやっているのだ?」と疑問に思うことがあります。逆にメーカーからすると「代理店は一体何をやっているのだ」と思うことも多くあります。もちろんお客様である研究者から見れば「メーカーも代理店もなんであんな変なことばかりするのだ」という思いもあるでしょう。

でも長年続けられてきたことであれば、その存在にはなんらかの「理由」はあります。そしてその理由が実は「自分」にあったということも珍しくないと思います。今回のチラシの話のその好例だと思います。

変なことが持続的に行われてしまっていることは解決しないといけませんが、まずは一歩自分の立ち位置から下がってみましょう。全体を眺めると意外な相互関係があったりします。そうなるとお互いに協力をしないと問題は解決しないのです。

Tags:

Leave a Reply