ライフサイエンス研究用試薬・機器メーカーのFacebook利用状況

ここ2年で話題になったTwitterに続いて、Facebookの利用が日本国内でも増加してきています。

そこでライフサイエンス研究用試薬・機器メーカーがどのようにFacebookを活用すれば良いかを考えるために、いろいろ調べてみました。

Facebookの魅力

例えば斉藤徹氏は“【続編】Facebookは日本に普及するだろうか?”の中で以下のことを紹介しています。
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アーリーアダプターや広告関係者の間で、Facebookの話題が一気に増えてきた。実際にFacebook公表値に基づき統計データを開示しているFacebakersを見ても、日本での伸びが急加速をはじめた可能性が見受けられる。

またもうひとつ感心するのが、友人関係を広げていく工夫がいたるところにされていること。mixiの平均マイミク数が25人に対して、Facebookの平均友人数は130人というのは、両者の特性をあらわす上でよく引用される数値だ。実名性であること、そのため交流がフランクかつフレンドリーに行われていることもあいまって、リアルと大差ない感覚で人脈が広がっていく点が大きな強みになっている。

Twitterはその極めてシンプルな構造のため、広告代理店やWeb制作会社にとってビジネスになりにくい側面があった。それに対してFacebookは、(a)FacebookファンページやFacebookアプリの制作需要、特にコマース連動やインタラクティブアプローチなど高度なコンテンツを制作できる点 (b)FacebookオープングラフAPIによる自社サイトのソーシャル化で、ウェブ制作需要が見込まれる点 (c)Facebook Adsなど日本でも利用できる広告媒体が標準装備されている点(ただし現在は直販のみ) などの点で、Twitterよりエコシステムが成立しやすい。特にコマースとの連動などは有望だろう。

実際にFacebookを使ってみないと(最初は使い方が分かるまでずいぶん時間がかかってしまいますが)、Facebookの何がビジネスに向いているかはなかなかわからないと思います。

論より証拠なので、例えば「無印良品」のTwitterとFacebookのページを比較してみましょう。

Twitterは無印良品 MUJI.netで以下のような画面です。

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それに対してFacebookの無印良品ページは以下のような画面です。

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ずいぶん違います。

またFacebookの場合はTwitterの「つぶやき」に相当するのが「ウォール」で、こちらを見ると以下の画面になります。

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パッと見の違いをまとめると以下のことが言えると思います;

  1. Twitter上でのブランディングは非常に限定的にしか行えません。その一方、Facebook上のブランディングは工夫次第でほぼ自由に行えます。無印良品なんかはまだおとなしい方でVictoria’s Secretなどになると、公式ウェブサイトと区別がないぐらいに自由にブランディングできています。
  2. Twitterは基本は一方通行の「つぶやき」です。双方向のコミュニケーションは”@名前”を使えば出来ますが、決してそれに最適化された構造にはなっていません。特に第三者がそのコミュニケーションを確認するのは人手間です。
  3. Twitterでは1対1のコミュニケーションですら上記の状態なので、1対多のコミュニケーションの場合(例えば一つの「つぶやき」に対して、複数の人がコメントした場合)はほぼ不可能になります。
  4. それに対してFacebookのウォールでは、一つ一つの「つぶやき」に対してどのようなレスポンスがあったかが分かりやすく、第三者が見てもすぐに会話の流れが理解できます。

研究試薬・機器メーカーの商売は完全に1対多です。

1対多という意味は、例えば学術的なQ&Aは質問した人だけに有用なのではなく、同じような疑問を持っている研究者もたくさんいるということです。ですからメーカーと研究者が行ったやり取りは、第三者が後で見に来たときに分かりやすいのが重要です。

また研究用製品でブランディングがどれぐらい重要かについては意見が分かれると思いますが、実際のところはかなり大きなウェイトを占めていると僕は思います。ですからブランディングが自由にできるというのは大きいです。

そう考えると、研究用製品メーカーにとっては断然Facebookの方が魅力的に見えます。

ライフサイエンス研究用製品メーカーの使用状況

上記のように、Facebookはずいぶんとメーカーにとって魅力のあるソーシャルツールに思えます。それでは実際にどのように使われているか、僕の方で簡単に調査しましたので、以下に紹介します。

日本でも馴染みのあるメーカーでFacebookを使っている会社を見ました;

  1. ClontechIn-Fusion, Xfectのファンページ
  2. Life TechnologiesGibco, qPCRのファンページ
  3. Qiagenのファンページ
  4. Sigma-Aldrichのファンページ
  5. BioLegendのファンページ
  6. Bio-Radのファンページ
  7. Abcamのファンページ

結論から言うと、一番良かったのはClontechおよびClontechの製品であるXfectとIn-Fusionのファンページでした。

代表としてIn-Fusionのファンページを紹介します。

Clontech In-Fusion Cloningファンページ

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上記の図の赤枠はClontechの社員ではなく、ユーザが書き込んだもの(ウォールへの書き込み)です。このようにユーザからのウォールへの書き込みが多いのがClontechのファンページの特徴です。多のファンページではごくまれにしかこのような書き込みはありませんでした。しかもこのような書き込みに対して、Clontechの社員はほぼすべて回答しています。

また下図のようにClontechから研究者に向けた問いかけも多くあります。そしてこのような問いかけに対して、研究者側からしっかりコメントがもらえています。

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興味深いのは、このファンページがたった125人のファンしかいないということです。例えばLife Technologies社のファンページは2,000人を越えるファンがいますが、研究者側からの書き込みで見るとClontechの方が断然多くなっています。大切なのはファンの数だけではないということがよくわかります。

その他のメーカーのファンページ

2,196人のファン(「いいね!」と言っている人)を抱えているLife Technologiesのファンページは一見するとそれなりに活気があります。Life Technologies側からの書き込みは多いし、それぞれの記事に「いいね!」を押してくれているユーザも多いように見えます。

しかし「いいね!」を押している人を確認してみると、この人本当に研究者かなというプロフィールが非常に目立ちます。Life Technologiesの社員が押していると思われるものも少なくありません。そういう意味で、この「いいね!」というのはファンページの活気の指標としてはあまり適切ではない気がします。

その一方でコメント(実際に何か文章を書き込んだもの)は非常に少ないし、ウォールへの書き込みもまともなものはありません。

そうなると2,196人のファンはどんな人たちなんだろうかと疑問に思えてきます。人数も多いので全員は確認できませんが、パッと見たところLife Technologies社の社員が多いという印象を受けました(例えば本社があるSan Diego市に住んでいる)。何しろ年間で3,500億円を売り上げる巨大な会社ですので、社員のネットワークを使うだけでファンはかなり集まるはずです。

同様のことはSigma-Aldrichのファンページについても言えます。1,731人のファンはいるのですが、「いいね!」主体で実際の書き込みが少ないです(それでもLife Technologiesよりは多い印象)。そして「いいね!」を押している人は研究者と思えない人が多いです。

それ以外のファンページは状況としてはLife TechnologiesとSigma-Aldrichとよく似ています。ただファン数が300未満なので、「いいね!」も少ない印象です。

結論として、Clontechの一人勝ちのようです。

どうしてClontechは一人勝ちしたのか

Clontechが一人勝ちしたのはなぜでしょうか。ファンページを見ていると、以下の要因が関わっているように思えました。

  1. ちゃんと実験のことについて書き込んでいる:すごく当たり前のことのように思えますが、ファンのことをちゃんと考えているのはClontechだけではないかと思います。Clontechは製品の話、実験の話に絞って書き込んでいます。しかし他社は会社の売上げとか、社会貢献活動とか、企業戦略とか、合併の話とか、学会展示とか、そんな話ばかりしています。研究者というのは起きている時間の1/3~1/4は実験しています。ですから研究者の側に立てば、実験のことを中心に書くのは当たり前です。
  2. 製品ごとにファンページを持っている:まだIn-FusionXfectだけですが、個別のファンページがあります。Xfectはまだファンが25人なので評価のしようがないのですが、In-Fusionについて言えば、Clontech全体のファンページよりも明らかに活気があります。上述とも関連しますが、研究者が欲しがっている情報をどれだけピンポイントで提供できるかによって活気が生まれたり生まれなかったりします。製品個別にファンページを設けることはそのための良い方法です。

まとめ

Facebookのビジネスでの利用は非常に注目されています。先に紹介した無印良品はかなり話題になっていますし、海外ではStarbucksのファンページがとても勉強になります。残念ながらDELLのウォールみたいにネガティブコメントが目立つものもありますが、ユーザからの書き込みに素早く誠実に答えていけば避けられるのではないかと思います。いずれにしてもそれなりの努力は必要でしょう。

ライフサイエンス業界について言えば、まだまだ企業の利用は発展途上のようです。でもClontechのファンページはうまくいっているようで、かなりポテンシャルを感じさせます。驚くべきことにClontechは公式ホームページではFacebookファンページのことを全くPRしていませんが、社内体制が整えばより多くのファンを集めに走るのではないかとも予想されます。ただ先の例で見ても分かりますように、ファン数の重要性はそれほどないかもしれません。むしろファンにはならないとしても、ファンページを通して、自社が誠実に顧客と接している姿を顧客に見せられます。このことの方が大切かもしれません。

バイオの買物.comでもFacebookファンページを準備中ですが、上述したことを肝に銘じながら、活気のあるものを目指していきます。

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2 Responses to “ライフサイエンス研究用試薬・機器メーカーのFacebook利用状況”

  1. 福田雅人 says:

    Facebookがビジネスに応用出来るような気がしたので、1週間ぐらい前に始めました。ライフサイエンス業界の友人にも勧めていますが、反応は今いちですね。ロシア人の社員が2人いるんですが、2人ともFacebookで友人と交流しています。日本在住の外国人、数十万人が利用している印象を受けています。記事は会社としてFacebookを立ち上げる際の参考にさせていただきます(^-^)/

  2. Facebookに関するブログはFacebook tagにまとめていますが、全体的な印象としてはバイオ業界のようなBtoBではちょっと使いにくいかなと思っています。ただソーシャルは刻々と変化していますので、数ヶ月後はどうなっているかはわかりません。
    日本でソーシャルでがんばっているのはTwitter上のThermo Scientific。ここを参考にするのが現時点ではベストな気がしています。

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