広告に使っているお金の半分は無駄になっている。問題は、それがどっちの半分かが分からないのだ。

このブログの表題はJohn Wanamakerの言葉 “Half the money I spend on advertising is wasted; the trouble is I don’t know which half.” を翻訳したものです。僕がマーケティングをやり始め、しかも会社業績が芳しくなくて大幅な予算カットを命ぜられていたとき、上司の米国人が教えてくれた言葉です。John Wanamakerは19世紀に米国でデパートを経営していた近代広告の父とも言われている人だそうです。

インターネット広告ではユーザがどれだけ長くページに滞在したかとか、あるいはどの広告をクリックしたか等が追跡できるため、有効な広告と無駄な広告の区別がつきそうな錯覚があります。そして広告をクリックする確率(クリックスルー率)を最適化し、広告キャンペーン全体の効果を最大化することも行われています。

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例えば C-team が行っているサービスは、一つのキャンペーンに対して多数の広告を作成し、それぞれのクリック率を計測しながら、最もクリック率の高い広告を自然選択していくものです。またバナー広告を作成しているデザイナーも、ほぼもれなくクリック率の高い広告をPRしています。

でもみんな薄々気がついています。

自分自身は滅多に広告をクリックしないんだけど、なんでこんなにクリックばかりが注目されているんだろう。いったい誰がクリックしているんだろう、って。

そういえば、前回クリックしたのは何日間前、いや何週間前、いや何ヶ月前かなって….

だからクリック率ばかりに注目するのは、なんかちょっとおかしいよねとみんな思っています。でも上司やクライアントに説明するときには分かりやすいし、納得してもらいやすいので使ってしまう。

バイオの買物.comは広告収入によって運営されていますので、インターネット広告をやっています。ただお金をもらえればよいというものでもなく、掲載させていただいた広告が本当に広告主の売上げ向上につながっているのかは常に気になります。さらにバイオの業界はまだインターネット広告が浸透していませんので、どういうデザインのどういうコピーのどういう広告を出せば効果が出るのかは、まだ分からないことばかりです。

それでいろいろ勉強したり、データを眺めたりしています。その中で気になるものを一部紹介します。

67%のクリックは4%の”Natural Born Clickers”の仕業

日本語で紹介されているページがありますので、詳細はそちらに譲ります。

ポイントはズバリ

  • バナー広告の総クリック数の67%は,利用者全体の4%のユーザーによる
  • バナー広告の総クリック数の85%は,利用者全体の8%のユーザーによる
  • 利用者全体の84%のユーザーは,1度もクリックしなかった

しかも2007年のときに行った調査に比べ、2009年に行ったときの方が「1度もクリックしないユーザ」が68%から84%に急増していて、2010年の現時点ではクリックしないユーザはもっと増えていると考えられます。

クリック率を指標にすることを同様に問題視している調査は他にもあり、例えばLotame社のCMOのEric Porresは クリックスルー率がブランドを傷つけている可能性がある と指摘しています(詳細なレポートはこちら)。クリックスルー率に固執するのではなく、ブランド力を形成したり、売上げを伸ばしたり、収入源を増やしたりすることに注目しなければならないと述べています。しかしJohn Wanamakerが言ったように、これを計るのは容易じゃないのです。だからみんなクリックスルー率に期待を寄せていたのですが….

クリックスルー率は低くても、インターネット広告を表示することに価値がある

バナー広告等のクリックスルー率は今では0.1%程度が一般的になってきています。しかしそれにも関わらず広告があるというデータがあります。そのうちの一つを紹介します。先ほどのComscoreのレポート、“How Online Advertising Works”です。

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ここで見ているのは、広告主のウェブサイトに調査期間中に訪問したかどうかを、広告を見た群と見ていない群とで比較したものです。ご覧のように、広告を見たユーザは、最終的に広告主のウェブサイトを訪問する確率が向上しています。広告をクリックして訪問する率はわずかなので、大部分の人は後で訪問していることになります。

またこの調査では、最終的な売上げ向上につながったかどうかも見ています。

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インターネット広告を見ることによって、オンラインでの購入が42.1%増加し、オフラインでの購入が10.1%増加したというデータになっています。オンラインでの購入の割合が大きいのですが、ただパイそのもの(売上げの絶対額)はオフラインの方が大きいので、オフラインの方が絶対的な金額で見た効果は大きくなります。

バナー広告は一般にクリックスルー率が0.1%程度であり、非常に効果が少ないように感じられます。しかしこのような調査によると、それは違うようです。クリックスルー率は最終的な売上げ向上とは無関係であること、そしてクリックスルー率が低くても、大きな売上げ向上効果が期待できるとしています。

ではどのようなバナー広告を作ればいいの?

最初に紹介したC-team の場合、多数の広告を作ってクリックスルー率が高いものを自然選択的に選んでいく訳ですが、経験を積んだデザイナーであればあらかじめ予想がつくかというと、そうではないようです。デザイナーが「これはいい」と思ったものも最終的にはダメだったりするようですし、逆に「これはダメだ」と思っていたものが良かったりするそうです。

クリックスルー率をあてにしない場合は C-team のようにオンラインで簡単にデータをとることはできませんので、よりしっかりした調査が必要になります。例えばDyanamic Logic社などが行った調査“The Five Golden Rules of Online Branding”があります。

結論は

  • バナーは簡素なものが良い:バナー内の要素が多すぎるとブランドアウェアネスが起きず、顧客はそのバナーを思い出すことが出来なくなります。
  • ロゴは大きい方が良い:ロゴはバナーの14%以上の面積を占めるのが良い。ロゴが大きいと、メッセージが明確に伝わりやすくなります。
  • バナーは大きい方が良い:バナーが大きい方がメッセージが明確に伝わり、顧客は製品のことをより知りたいと思うようになります。
  • 人の顔があった方が良い:人の顔があった方が、製品やサービスに興味を持ちやすくなります。
  • 露出頻度は高い方が良い:頻繁に見た広告の方がブランドアウェアネスが向上します。5回でプラトーする可能性がありますが、業界やデザインに影響される可能性もあります。

人の顔の有り無しは判断が分かれるとしても、それ以外のものは参考にできると思います。

ただこの指標だけで有効な広告が作れるかと言えば、それも難しそうです。

総括

「インターネット広告であれば効果が簡単に分かってよい」とは思っていましたが、実際にはそんなに簡単ではないようです。

でもバイオの買物.comのようなメディアを提供し、広告を掲載していただく側としては、そこを理解していく必要があります。

メーカーでマーケティングを担当していたころ、インターネット広告に限らず、どこに広告を出しても効果が実感できずに困っていました。まさにJohn Wanamakerの状況です。バイオの買物.comとしては、すくなくともインターネット広告については十分にその効果を実感してもらえるよう、様々に勉強し、工夫していきたいと考えています。

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