Archive for April, 2010

バイオの買物.comの本当のスタート

Friday, April 16th, 2010

「まとめてカタログ」を公開したことで、これからが本当のバイオの買物.comのスタートだと強く感じている今日この頃です。バイオの買物.comを立ち上げた目的を果たせるのは今までのサービスではなく、この「まとめてカタログ」なのです。その目的とはそもそも何か、このブログを読んでくださっている皆さんと少し共有したいと思います。

研究者とメーカーのために、業界をチェンジ

バイオの買物.comはチェンジを起こさなければなりません。旧態依然としている日本のバイオ業界をより良い方向に向かわせるものでなければなりません。研究者とメーカーがより高いレベルで情報を共有し、お互いがお互いを高め、そして日本の科学の推進に貢献するように手助けしなければなりません。

どう頭をひねっても、先端科学を支援しているはずのメーカーが堂々と恥ずかしいキャンペーンを展開している実態は、本来のあるべき姿には思えません(もちろんあまりにもひどいのをやっているのは一部ですが)。私自身メーカーのマーケティング担当でしたし、どうしてこのようなキャンペーンを展開するのかは理解しているつもりです。そして私自身もあまりひどいものはやったことはありませんが、自分の理想を考えると、とても自慢できないキャンペーンも多くやってきています。自分を棚に上げることになってしまうのですが、それでもやはりこれはあるべき姿ではないのです。

バイオの買物.comがそのチェンジを起こすきっかけになればという気持ちは非常に強いです。

マーケティングではAIDMAと言って(「法則」とつけている人がいるようですが、私自身、科学者出身としては「法則」という言葉を安易につけることは大いに慎まなければなりません)、消費者の心理の変化を著しているモデルがあります。最初のAIは注意・関心です。消費者の注意と関心をまず引きつけなければならないという意味です。そして多くの産業においては、これは広告などの手法で行われています。

しかしバイオテクノロジーではこの注意・関心の引きつけが非常に難しいのです。一つには研究者が非常に細分化されているため、広告を出しても、ニーズがマッチする研究者がそもそも少ないのです。また広告を掲載すべき有効な媒体の絶対数が少ないです。雑誌は確かにあるのですが、恐らく研究者が雑誌に向かっているときはあまり集中力を散らしたくないのでしょうか、雑誌広告が有効だったという話は(海外を含め)聞いた覚えがありません。

そういうまともな方法での注意・関心の引きつけが難しいせいか、洋の東西を問わずメーカーが頼るのは値引きキャンペーンです。そうです、アメリカ・ヨーロッパでも値引きしまくりなのです。変なキャンペーンもやっています。BioCompareは新しい切り口として、インターネットビデオを使ったバイラルマーケティングキャンペーンを手助けしていて、BioRadのPCR songなどが有名な成功例ですが、まぁいずれにしても変なキャンペーンであるのは変わりありません。本当はそういう露出ばかりを目指したマーケティングではなく、製品の良さをアピールする地道な製品資料、説明会、ワークショップこそが先端科学のマーケティングにふさわしいという思いがあります。

バイオの買物.comの大きな狙いは、研究者の注意・関心を引きつけることを大幅に簡略化することです。研究者が「買物モード」の時に的確な広告を目の前に提示すれば、AIは簡単なはずです。そして次のDMA(欲求・記憶・行動)の方に重点がシフトします。AIを簡略化できれば、メーカーのマーケティングも自然とDMAに向かいます。注意を引きつけるための奇抜なキャンペーンではなく、製品の良さをしっかりと伝えることに重点が移る訳です。

これがバイオの買物.comの目指すチェンジです。目立つための派手なマーケティングではなく、製品の技術的利点を真剣に語り合うことこそがマーケティングになれば、研究者にとってもまたメーカーにとってもWin-Winだと考えています。

特にメーカーの研究所で地道な開発をしている研究者は大喜びしてくれると思います。

最高のものを作る

私はバイオの買物.comを立ち上げる以上、世界中にまだ存在しない最高のものを作りたいと考えました。そして「まとめたカタログ」はまだまだ未完成ではありますが、これならBiocompareなどをしのぐものに仕上げられると思っています。以前から提供しているサービスではそこまでこだわることができませんでしたが、「まとめたカタログ」はそういうつもりで最初から作りました。

「まとめてカタログ」ではBiocompareの製品分類方法に大いに問題点があると感じ、これを大幅に良くしたものを目指しました。Biocompareやその他のメーカーのウェブサイトを分析し、どうしてそれらが十分でないのかを考えました。私が出した結論は、今までウェブで使われているようなユーザインタフェースでは、生命科学な多様な研究分野、多様な製品をカバーできないというものでした。そこで「まとめてカタログ」では、今までのウェブデザインではほとんど見たことがないようなユーザインタフェースを用意し、あたかもMac OS XのファインダーもしくはiTunesを使っているかのような操作性を実現しました。まだカテゴリー分けが十分に進んでいないため、このユーザインタフェースの真価は一部の製品カテゴリーでしか見ることができません。今だと例えば抗体のカテゴリー制限酵素のカテゴリーにこのユーザインタフェースの良さが現れていると思います。

自分で言うのも変なのですが、大変だけど大胆なチャレンジをしたつもりです。それは真に役立つ、最高のものを作りたいからです。

また「セミナー」「キャンペーン」「ニュース」のページにおいても、今までにない工夫をしたつもりです。例えば日経BPが運営しているBiotechnology Japanにおいても各メーカーのキャンペーンが掲載されています。またかなりがんばっているものとしては代理店の広瀬科学のホームページのキャンペーンのカテゴリーがあります。ただこれらのページの問題点はキャンペーン記事が掲載順に並んでいるだけということで、一切アノテーションされていないということです(それは多分に、これらが単なるブログシステムを流用してページを作っているものだからでもあります)。例えば「いまやっているキャンペーン」という当たり前な絞り込みですら、これらのページではできないのです。

バイオの買物.comの「キャンペーン」ページではまずデータは勝手に取り込んでいます。メーカーが記事を投稿しようがしまいが、そんなことは関係ありません。研究者の立場から「このメーカーのキャンペーン情報は欲しい」ということであれば、掲載しなければならないのです。ですからバイオの買物.comは基本的には勝手に情報を取り込むようにしています。

またキャンペーンのデータは最低限のアノテーションをします。開始日と終了日をつけて、そして「いまやっているキャンペーン」がすぐにわかるようにしています。まだ大したレベルのものではないのですが、必ず既存のサービスよりも付加価値の高いものを作っていくとうのがバイオの買物.comのスタンスです。

バイオの買物.comの「セミナー」ページも同様です。学術的なセミナー情報源としてはSeminar MLなどがよく使われていると思いますし、Biotechnology Japanでも情報が掲載されています。しかしアカデミックなセミナー・ワークショップとメーカー主催のものが両方とも含まれ、なおかつ「これから実施されるセミナー」で絞り込めるものはないのです。こういう新しい付加価値をつけたものをバイオの買物.comは提供していくつもりです。

最後に

現時点でのバイオの買物.comの考え方を大雑把に紹介いたしました。ちょっと大きく書きすぎたところもありますが、ベンチャーをやっている人間の意気込みだと思って、大目に見てください。

まとめてカタログ公開と全面リニューアル

Friday, April 9th, 2010

バイオの買物.comは4月12日(月)に全面リニューアルし、新しくオープンします。

目玉のサービスは「まとめてカタログ」です。使い方はまとめてカタログの使い方にあります。

まとめてカタログとはライフサイエンスのメーカーの製品を一つにまとめたものです。非常に高速で優れた検索機能を提供するのはもちろんのこと、カテゴリー分けも行っています。数十万の製品がありますので、カテゴリー分けは大変な作業です。ただアノテーション無しではゲノム配列は理解し得ないのと同様に、メーカー横断的なカタログもカテゴリー分けの有る無しでは全く利用価値が違うと考えています。これについてはまとめてカタログFAQに解説してます。

Castle104を立ち上げ、一番最初にバイオの買物.comをリリースしたのは2008年の3月でした。そして抗体検索サービスやキャンペーン情報をまとめるサービス等も提供してきました。しかしいつも頭の中にあったのは、抗体以外の製品を含めたメーカー横断的な製品カタログを作ることでした。

2008年3月にリリースした最初のバイオの買物.comでは製品比較表を用意しました。これは今でもアーカイブに用意しています。このときは製品比較表を作成することによって、メーカー横断的に製品を比較検討できるようにしようと考えました。この作成作業および更新作業が大変になるとはもちろん分かっていましたが、製品カテゴリーを絞れば実現できるのではないかと考えていました。しかし実際にやってみると、比較表を作成するために必要な情報を探すのに予想以上に手間取りました。例えばプラスミドを精製する製品の例で言いますと、どれぐらいの大腸菌培養のスケールが扱えて、どれぐらいのDNAが最終的に得られるかという基本的なスペックが製品ページに記載されておらず、製品説明書まで読まないと分からないということが珍しくありませんでした。また製品カテゴリーを絞ってしまうとウェブサイトとしての魅力がなることも悩みでした。アクセス数も思ったほど伸びませんでしたので、結局は最初に作成後、ほとんど維持管理できないという状態になってしまいました。

その後は抗体検索のサービスなど、当初の計画とは方向性の異なるものも実施しましたが、常に頭にあったのはすべての製品を網羅したカタログを如何に作るかでした。そして2009年の春頃からは、基礎データはすべてウェブを巡回するプログラムに任せ、手作業で行うのは簡易的なアノテーションだけというシステムの作成を開始しました。

アノテーションはカテゴリー分けが中心で、この作業は大変だったものの比較的簡単に進みました。大変だったのは利用者に見せるユーザインタフェースです。通常ですとカテゴリーをたどっていくに従って次から次へと新しいウェブページが開くようにインタフェースが使われます。メーカーウェブサイトもほとんどがこれです。しかしライフサイエンスのカタログを作ろうとすればカテゴリーの数が数百以上になるのは明白だったので(逆にそうしないとカテゴリーあたりの製品数が膨大になって、利用者は見る気を失ってしまう)、いちいち新しいウェブページを開くのでは見るのが面倒くさくなってしまいますし、「迷子感」が出てしまいます。

いろいろ考えたあげく、まとめてカタログではMiller columnsというMac OS Xのファインダーで使用されているユーザインタフェースを使うことにしました。階層が深くなれば、また階層あたりのカテゴリー数が多くなれば、このような仕組みがベストだと判断したからです。しかしMiller columnsを使ったウェブのユーザインタフェースはすでに利用されているものの(例えばGE Healthcare社のオンラインカタログ東洋紡のオンラインカタログがそうです)、iTunesのようにカテゴリーと製品を同時に見せているものは全く見たことがありませんでした。そしてデザインを含めゼロから作成したのが2009年の10月ごろです。「ウェブだから」とあきらめるのではなく、Javascriptをかなりふんだんに使って、Mac OS XファインダーやiTunes並の操作感を目指しました。

データベースのスピードの問題にもぶつかりました。まとめてカタログではカテゴリーを非常に細かく区切るケースが出てきます。ですから末端カテゴリーに行ってから初めて製品がリストアップされるのではなく、途中のカテゴリーにたどり着いた段階でも、それより下の製品が全部表示されるようにしなければいけません(実際、BioCompareでは末端カテゴリーでしか製品を表示しないため、分かりにくくなってしまっているカテゴリーが目立ちます)。しかも価格順で並べ替えないといけません。データベースに使用していたMySQLは、検索結果として返すデータ数が少ない場合は非常に高速に動作するものの、該当データが多く、これを並べ替えなければならないときは大幅にスピードが落ちることががあります。

MySQLの最適化を試みたものの結果はむなしく、解決策としてSphinxを導入したのは2009年11月でした。これのおかげでデータベース検索は画期的に早くなりました。数秒かかっていたクエリが百倍ほど早くなりました。しかも機能も増えました。

そうこうやってようやくたどり着いたまとめてカタログの公開です。私がCastle104を2007年11月に設立してから目指したことは、これで一つの区切りを迎えます。特にカテゴリー分けはまだまだ作業が進んでいませんし、参加メーカーや製品ももっと増やさないといけないのですが、まとめてカタログこそがバイオの買物.comとCastle104の目指してきた方向、これから目指す方向であるとご理解ください。これを中心に、ライフサイエンスの研究者に役立つサービスを今後も展開していきたいと思っています。

早い段階からスポンサーとしてCastle104を支えてくれたメーカーの方々、その他、助言やサポートをしてくださった方々、ありがとうございました。皆様のお力無しではここまでたどり着けなかっただろうという思いで、大変感謝しています。