ASPサイト内検索の限界:GE Healthcareのサイト内検索が改善された件

今日確認したところ、11月25日付けでGE Healthcareのサイト内検索がリニューアルされたそうです。(検索のヘルプ

仕事柄、僕はいろいろなウェブサイトの検索機能について技術的なことおよびユーザビリティー的なことを詳しく調べることを多くやっています。こういった調査はあまり公にはしていませんが、近日中にバイオの買物.comのサイトをいろいろとリニューアルする予定もありますので、今回はGE Healthcareのサイト内検索についていろいろ解説したいと思います。

実装に使われている技術

検索結果ページを解析したところ、GE Healthcareの新しい検索サービスは「Sync Search」というサイト内検索ASPのものであることがわかりました。

こういうサイト内検索ASPサービスは非常に多く、僕自身も5年前にオープンしたバイオ関連ウェブサイトでNewswatch社のものを利用したことがあります(仕組みの解説はこのページ)。ひとことで言えば特定のサイトに限定されたGoogle検索のようなもので、検索システムはすべてASPのサーバで動いています。今回の場合で言えば、GE Healthcare自身のサーバの仕事はほとんどなく、検索を実際に行っているのはすべて「Sync Search」のサーバです。

料金については今回は恐らく「プロフェッショナル版」を利用していると思いますので、初期費用298,000円、月額費用50,000円~だと思います(料金表)。僕が利用したサービスの同じぐらいの料金でした(今のNewswatch社のウェブサイトではちゃんと料金が載っていないみたいですが)。当時「Googleに頼むとうんと安いのに、なんでこんなに高いんだろう」と思ったものですが、5年間で値段はあまり下がっていないようです。

僕は当時、なぜGoogle Site Searchを使わなかったか

Googleが提供しているのはGoogle Site Searchというもので、GE Healthcare程度のアクセス数のサイトであれば、料金は年間2,000ドルでまず間違いなく収まり、2年目以降でもSync Searchの半額以下になります。Googleは無償のサービスもありますが、無償だと広告(競合他社を含む)が入ってしまうのであまりお勧めできません(と言いながらもフナコシはこれを使っています)。

Google Site Search的なものは5年前にもありましたが、これを僕が利用しなかった理由はサービス内容の優劣ではなく、社内でクレジットカード決済が面倒で、結局は僕が毎月立て替えなければならないからでした。そんなことはやりたくなかったので、大幅に割高だと知りつつ日本のASPに依頼しました。

サービス内容ではなく決済方法で何をどう買うかが決まるというのは、日本のバイオ業界における代理店の存在に似ているなと思ったものです。

検索スピード

検索スピードですが、2010年の7月27日に調べたところ、GE Healthcareの検索は元々早い方でした(少なくともバイオ業界で比較すると)。0.5秒から0.8秒でしたので、「瞬間的」とまではいかないものの、全くストレスを感じないスピードだったはずです。今回の新しいシステムにしてレスポンススピードはざっとみて半分になっていますが、もともとが早かったので、体感的にはそれほど差はないと思います。検索結果数はあまり変わっていないみたいですが、これがいいことなのか悪いことなのかは結果を精査しないと分からないので何とも評価できません。

僕の環境から計ったレスポンスタイムは0.1-0.3秒でしたが、検索に特化したASPであればこれぐらいは出るだろうなというスピードで、特別なものとは言えません。ただバイオ業界の大部分のウェブサイトと比較すれば格段に早くなっています。

なおバイオの買物.comの「まとめてカタログ」の検索では少し特殊なこともやっているため、検索時のレスポンスまでに1秒ぐらいかかってしまいます。しかし裏で動いている検索システム自体は非常に高速です。したがってまだまだ最適化で高速化できますし、近々リニューアルオープンするときも多少は高速化できると思います。

結果表示の仕方

サイト内検索ASPを利用した場合、検索結果の表示はよくも悪くもGoogleに非常に良く似たものになります。

日本のサイトの検索結果USAサイトの検索結果(ASPではなく独自仕様)を比較すると、その違いは際立っています。

ASPを使った日本のサイトの場合、なじみ深いGoogleの検索結果画面と似たものなので、違和感はありません。しかし一番困るのが網羅性の担保です。
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日本のサイトの場合はHisタグ精製に関わる製品がすべて見つかったという自信が持てません。いくつかのHisタグ精製製品は見つかり、Ni Sepharose 6 Fast FlowがあることやHisTrap FFがあることはわかりますが(それぞれ検索結果の1番目と2番目)。しかし超名門Pharmaciaを受け継いだGEなら他にもたくさん製品があるはずなのに、ぱっと出てきません。

3番目の検索結果では「タンパク質発現・精製_ヒスチジン-タグ(HisTag)融合タンパク質の発現・精製・検出」というレビュー的なページが出てきますので、これを見るとすべての製品が見つかります。ASP検索ではパッと出て来なかった”His Gravi Trap”, “His SpinTrap”などもこのページでは見つかります。

これに比べるとUSAのサイトでは網羅性が担保されています。初期状態では”Introduction to Tagged Protein Purification”とか”Introduction to Metal Chelate Affinity”、”SELECTION GUIDES – Affinity Chromatography”へのリンクしかありませんが、これらのページに行けばすべての関連製品が見つかります。そしてその他のアプリケーションノート等が見たい場合は、タブを切り替えることによってそれも簡単に確認できます。
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メーカーのマーケティングをやっていた自分自身の経験からすると、一番大切なのはまず製品をしっかり、全部みせることだと思います。そしてカタログ番号と価格をズバッと見せて、簡単に注文書が書けるようにしてあげなければなりません。なぜならば一番重要な顧客は、具体的な製品を頭に描いていて、注文書をまさに書こうとしているお客様だからです。在庫がない場合に備え、在庫の有無や代替品の有無なども見せてあげる。それぐらいかゆいところに手が届くと代理店等も喜んでくれるはずです。そういう思いで5年前に作った僕のサイトの検索結果は以下のようなものでした。

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漠然と製品について調査している顧客も大切ですが、優先度はどうしてもワンランク下がります。そういう意味ではASPサイト内検索は若干不足だと感じています。

ASP検索サービスの「絞り込み検索機能」の注意点

日本のサイトでは「製品カタログ」で絞り込むオプションがありますが、これは状況を改善するどころか、むしろ悪化させてしまいます。なぜかというと、レビュー的なページが表示されなくなってしまうからです。また「製品カタログ」と言いながらアプリケーション的なページが上位に表示されてしまいます。
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なぜこうなるかというとASPサービスの場合、「絞り込み検索機能」の実装が非常に単純だからです。具体的にはURLだけを見て絞り込みが行われます。

GEの日本語サイトの場合は恐らくURLに”catalog”の文字があるかないかだけを見ています。そのページの内容等は一切見ていません。ですからURLに”catalog”はあるものの、実際にはアプケーションノートであるようなPDFファイルが上位に表示されてしまいます。もしかしたらURLの末尾に”.pdf”があるものをはじくことはできるかもしれませんし、そうであるならばGE担当者の設定の問題もあることになります。しかしいずれにしてもASPサービスの「絞り込み検索」機能には注意が必要で、最悪の場合はサイト全体のURL構造を見直す必要もあります。

同様に「日本語サイト」「本社サイト」の絞り込みオプションも、内容が英語か日本語化を見ているのではなく、あくまでもURLが”.co.jp”か”.com”かを見ているだけです。「日本語サイト」で絞り込んでも英文だけの情報が数多く表示されます。

ひとことで言うと、うまくはまるときは使えるのですが、通常はASPサイト内検索サービスが提供する「絞り込め検索機能」はあまり役に立たず、ただただユーザを混乱させることの方が多いと思います。

一つの解決策

上記のASPサイト内検索の問題を解決する方法の一つは、フナコシなどが行っているように検索の仕組みを複数提供することです。
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フナコシの場合は「製品検索」と「サイト内検索」(Googleのもの)でそれぞれ別々のキーワード入力欄を用意しています。それでどっちを使うかをユーザに選択させています。

決してエレガントな方法ではないし、これもウェブサイトのユーザが混乱してしまう原因にもなりますが、「製品情報を素早く提供する」ことを重視すればするほどASPが提供するサイト内検索に不満を感じるはずです。一方「製品情報を素早く提供する」ことよりも「製品の関連技術情報を紹介する」を重視するのであれば、ASPサイト内検索でも十分と感じられるかもしれません。

ちなみに私が5年前に作ったサイトの場合は「製品情報を素早く提供する」ことを重視しましたので、やはり検索キーワード入力欄を2つにしました。技術知識が向上した今であれば、GE Healthcare USAのような仕組み、もしくはTakara Bioのような仕組み(検索キーワード入力欄をなんとか統合した形)にしたと思います。

バイオの買物.comの取り組み

バイオの買物.comではまとめて抗体検索まとめてカタログに検索機能を用意しています。

まとめて抗体検索については近日中にがらりを向上させる予定ですので言及しませんが、まとめてカタログについてお話します。

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まとめてカタログでは、「検索の重要性」を認識しつつ、「検索の限界」を強く意識しています。

上図の検索結果は“his tag purification”で検索した結果ですが、大きな問題としてHis-tag付きで発現精製されて販売されているProtein G Proteinなどが上位に表示されてしまっています。しかもこの種の製品が非常に多いため、検索結果としてはそれがメジャーにさえなってしまっています。

検索という仕組みを利用する以上、こういうことを避けるのは非常に困難です。Googleですら同一ウェブサイトからの検索結果を2つまでに絞ることによって、この悪影響を最小化しているにすぎません。しかし網羅性を重視する「まとめてカタログ」ではこの手は使えません。

そこでまとめてカタログで行っているのは、人力での製品カテゴリー分けです。検索結果の一番上を見ますと、検索条件に合致したカテゴリーへのリンクが用意されています。
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このリンクを利用すれば、Hisタグタンパク質の精製に関わる製品だけを見ることが見えます。

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このようにカテゴリー分けを行うと、他にも大きなメリットがあります。それは網羅性の担保です。

実はHisタグタンパク質の精製に関わる製品を見ると、”tag”というキーワードが製品ページにないものが少なくありません。例えばMerckのHis Bind Purification Kitなどは、製品解説のどこにも”tag”という単語は出てきません。こういうのは検索キーワードを注意しない限り見落としてしまいます。しかし人力でカテゴリー分けが行われて、その分け方が十分であれば、うまく見つけられるように出来ます。

このようにバイオの買物.comでは検索には最大限工夫をしつつ、その限界についても強く認識しています。そのため、検索とカテゴリー分けをうまく組み合わせた仕組みを提供し、また改良を続けています。

人力によるカテゴリー分けは膨大な作業量になりますが、これをやらない限り網羅性は担保できないし、網羅性が担保できないと「比較サイト」としての価値は半減してしまうと考えています。この方法についても技術開発をしながら、より良いサービスの提供を目指しています。

この記事を含め、ライフサイエンス研究用製品メーカーのウェブサイトのあるべき姿について書いた記事を特集ページにまとめました。あわせてご覧ください。

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2 Responses to “ASPサイト内検索の限界:GE Healthcareのサイト内検索が改善された件”

  1. […] ASPサイト内検索の限界:GE Healthcareのサイト内検索が改善された件 : 比較的新しい記事で現状はこの頃と変わっていません。Googleを含めたそこいらの会社が提供している単純な検索だけで […]

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