Steve Job’s の戦略の真逆を行くバイオ関連メーカーの戦略

NewImage左図の”The Innovation Secrets of Steve Jobs”を表したCarmie Gallo氏がFast Companyウェブサイトに記事(Steve Jobs’s Strategy? “Get Rid of the Crappy Stuff”)を書いていました。バイオ関連メーカーの正反対を行っているApple社の戦略が紹介されていますので、バイオ業界と絡めて論じてみたいと思います。

フォーカスするというのは、数多くの良いアイデアにノーということだ

Steve Jobsの2008年の言葉

People think focus means saying yes to the thing you’ve got to focus on. But that’s not what it means at all. It means saying no to the hundred other good ideas that there are. You have to pick carefully. I’m actually as proud of many of the things we haven’t done as the things we have done.

Carmie Gallo氏は、これだけフォーカスをするためには相当に勇気が必要で、多くの企業はこれが出来ないとしています。

Anyone can learn the principles that drive Apple’s innovation, but innovation takes courage, and few people have it. It takes courage to reduce the number of products a company offers from 350 to 10, as Jobs did in 1998.
…..
It takes courage to feature just one product on the home page of a Web site.

フォーカスすると決めたもの意外を捨てるということは、数多くの商売のチャンスを見過ごすということです。商売のチャンスが減る分、売上げが減る可能性があります。失敗したときのリスクが高くなります。

何よりもビジネススクールで学ぶことと逆行しています。しっかりとフォーカスするというのは学校で習ったことと真逆の戦略です。

Tim Cook (注:Steve Jobs不在時にCEOを代行している役員) once commented that a traditional management philosophy taught in business schools is to reduce risk by diversifying your product offerings. Apple, he said, represents the anti–business school philosophy. Apple’s approach is to put its resources behind a few products and commit to making those products exceptionally well.

フォーカスするというのは、多くの販売チャンスを見過ごして売上げ減少のリスクを冒すこと、失敗したときのリスクを敢えて大きくしてしまうこと、そしてビジネススクールで学んだことの逆をすることです。

勇気がいるのもうなずけます。ほとんどの会社がApple社みたいには出来ないのも納得です。

バイオ業界ではどうなっているか

さて、これを押さえた上でバイオの業界をちょっと見てみたいと思います。

バイオ関連メーカーのほとんどはフォーカスがない

ほとんどのバイオ関連メーカーは上記のようなフォーカスが出来ていません。

例えばプラスミドDNA精製キットを売っているメーカーを考えてみましょう。もちろんトップブランドはQIAGEN社です。QIAGEN社がこの製品にフォーカスするのは納得です。

しかしInvitrogen社(Life Technologies社)もSigma Aldrich社もPromega社もGE Healthcare社もRoche社もMerck社もBio Rad社もStratagene社もMillipore社もTakara社も、またその他大勢の会社も同じような製品を売っています。ほとんど聞いたことないですよね。これらのメーカーの製品は。それなのになんで売り続けているの?そう疑問に思うのは自然なことです。

どこの会社もQIAGEN社にはブランドで全く太刀打ちできませんし、性能的にもQIAGEN社のものは優秀ですし、技術サポートもしっかりしています。したがって各メーカーがQIAGEN社に勝てるただ一つの可能性は価格です。価格を安くすれば、バーゲンハンターがQIAGEN社製品から切り替えてくれるかもしれません。

悲しい商売です。私も担当していたことがありますが、グローバル本社の担当者も苦しそうだし(イヤイヤやっている感じ)、我々もほとんど値引きキャンペーンを張るぐらいしかやりませんでした。値引き競争をしているので、当然、利益は出なくなってしまいます。それでもこの製品をプロモーションし続けたのは、自社ブランドを露出したいがためでした。

プラスミドDNA精製キットに限らず、フォーカスのない製品展開はバイオ関連メーカーではむしろ当たり前になってしまっています。バイオの買物.comの「まとめてカタログ」を見てもらえれば一目瞭然です(3月ごろに公開予定の新バージョンではメーカーの乱立ぶりがよりいっそう分かりやすくなります)。

研究者にとっての不便

メーカーが自分たちの強みである製品にフォーカスせずに、むやみやたらと製品を増やしていくことの弊害を見てみましょう。

QIAGEN社ウェブサイトを見てみましょう。さて、QIAGEN社の一番の強みである核酸精製キットはどこをクリックすれば良いでしょうか??

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全く分かりません。QIAGEN社の顧客が最も良く探しにくるのは間違いなく核酸精製キットだと思いますが、もうそれは見つからなくなってしまっているのです。答えはトップナビゲーションバーの「製品」をクリックして、そこから「製品とサービス」そして「DNA」へとマウスを移動させることなのですが、しばらく悩まないと見つかりません。

バイオの買物.comが提供する解決策

私は各メーカーが強み以外の製品を多く取り揃え、プラスミドDNA精製キットと同じような状態がたくさん見られてしまっていることを非常に残念に思っています。

資本主義経済は競合が大切ですので、同じような製品を競って販売しているメーカーが複数あるのは良いことです。しかし特に競う訳でもないのに、多くのメーカーがとりあえず同じような製品をラインアップに加えるというやり方には賛同しかねます。ほとんど価値は生まれていないと思いますし、貴重なリソースが浪費されてしまっているのを悲しく思います。

とりあえずラインアップにそろえているメーカーに全く狙いが無いわけではありません。一つのメーカーですべての製品が揃ってしまえば、研究者を囲い込めるかもしれない。そういう期待のもと、研究ワークフローに沿った一通りの製品をラインアップに加える努力をしている人たちがいます。しかし少なくとも研究の世界では、そういうことは稀です。一通りの製品を揃えても研究者を囲い込むことはできません。

バイオの買物.comの狙いの一つは、こういう囲い込みの狙いを無効にすることです。メーカー横断的な比較検討を容易にすることで、一つのメーカーの枠にとらわれず、研究者は自由に製品を組み合わせて自分のワークフローを構築できるようになるでしょう。そうすれば、各メーカーは自分の強みにリソースを費やした方が得になります。R&Dリソースを集中させればよりイノベーティブな製品が生まれることが期待できますし、無駄なことをしない分だけ価格も低く抑えられるはずです。業界全体がこういう状況になることが大きな希望です。

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One Response to “Steve Job’s の戦略の真逆を行くバイオ関連メーカーの戦略”

  1. romeoちゃん says:

    現在、知的財産関連のコンサルタントをしております。現在バイオ産業のクライアント開拓、あるいはバイオベンチャーのキャリアチェンジを考えてまして、リサーチの途中で貴殿ブログに遭遇しました。大変勉強になるので、今後定期的にお邪魔したいと思います。バイオの買い物.comは差別化かつフォーカスしてますね!

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